風のささやき

午睡

子供が一生懸命に
起こす声が聞こえている

もう夕方か
それでもまだまだ眠り足りない
うとうとと眠りに引き戻されながら

うっすらと開く眼には
カーテンから漏れる夏の夕日が
白い壁を色づけている
薄い柿色の中で
月桂樹の枝の影が揺れている

いつの間にか僕の横には
子供が眠っている
さっきまでは
起こそうとしていたのに
諦めたのか

静かな寝息を立てているのは
もしかすると幼い僕なのか
夢の中に漂う

人の生はどこからが夢なのか
夢は生に混ざりこんで
目覚めていたとしても
どこかいつでも夢うつつで

なぜ子供は僕を
目覚めさせようとしていたのだろう

僕が目覚めると
君の何かが変わるのかしら
夕暮れの目覚めはどこか寂しい
このまま朝まで眠ってしまおうと
思っているのに

けれどその僕は
本当はどこにいるのだろう

波に洗われて眠っている
二枚貝かも知れないのに

見上げる高い椰子の木の先に
まばゆい夏の陽ざし
青い空は海と一つになって
僕は波に少しずつ削られてゆく

誰かと夢を
分かち合うことはできるのかしら
体の芯に残る生ぬるい余韻が
どこかで重なり合い
もっと素敵な夢になるといい

僕は目覚めているよ
きっちりと目覚めているから
もう少し眠らせてくれ
夢の中では君たちと遊んでいる

沢山の笑顔が湧いてくる
僕はきっと
良い人たちと出会って来たのだ

どんな夢を
生に見続ければ良いのだろう

柔らかな夕映えが
まだ壁に
優しい炎を燃やしている

子供が起こす声を遠くに聞きながら。Last Updated 2026/09

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